プロジェクトストーリー4-2「緊急連絡・報告アプリ」ビル管理の課題に対応するアプリでこれからの時代に必要な価値をつくる 

INTRODUCTION

迅速で効率的な安全管理を追求した
斬新なアプリケーションを開発

緊急時の対応はビル管理において絶対に欠かせない業務だ。しかし、緊急時というのは突発的に起き、特に夜間など手薄なだと現場は対応に追われ多忙である。そこで、安全管理の効率化を目指して新たなアプリケーション“OneRepo”が開発された。既に各地の事業所で試行が始まっており、近い将来の本運用、さらには社外への展開も見据えて、プロジェクトは着実に進行している。

多人数への情報伝達と報告書作成を一度に

ビルで何か問題が発生すると、スマートフォンのアラームが鳴る。送られてくるのは協力会社を含めた管理スタッフからの報告だ。内容を確認した上長は、オーナーサイドや関係各所に報告を展開する。あるいは、送信したスタッフに対応に関する指示を出す。この過程を担うのが、JR東日本ビルテックが西菱電機株式会社と共同で開発したアプリケーション“OneRepo”である。
このアプリの特長は大きく分けて2つある。1つは、複数の送信先に対して一度に連絡でき、さらに受信する端末でアラームを鳴らすことができること。すなわち、急を要する場合でも迅速かつ確実に、そして報告すべき相手全員に情報を伝えられるのだ。もう1つは、送信内容に基づいて自動的に報告書が作られるので、提出用の報告書を作成する手間が大幅に軽減されるということ。「ビル管理の現場の負荷を大幅に減らすことができます」と、リーダーとしてプロジェクトを引っ張る渡邉は説明する。

現場の負担を減らし収益にも結びつくツールを

この事業についての検討が始まったのは2019年のことだ。この年にビルテックの新たな経営ビジョンが制定され、今までにない「高付加価値」のサービスでFM業界のリーディングカンパニーを目指すことが掲げられた。これを受け、「現場の負担を削減しつつ、収益拡大にもつながる取り組み」を検討することとなり、渡邉や清水をはじめ自ら手を挙げた若手社員中心のプロジェクトチームが結成された。
まずは何に取り組むか決めなければならない。ビル事業本部でアイデアを募集したところ、緊急時における連絡・報告の効率化を求める意見が多かった。これはビル管理に共通する課題であり、同業他社への展開も期待できる。約1年かけて慎重に検討し、緊急時の連絡・報告を行うアプリの開発を進めることになった。
では、どのようなアプリにすれば業務を効率化できるのか。渡邉たちは事業所を交えてさらに検討を進めた。そして、パートナーとして選んだ西菱電機とともに開発を行い、2021年度からOneRepoの試行をスタートした。

試行を通じてブラッシュアップ

杉江が率いるウォーターズ竹芝事業所は、試行を最初に始めた事業所のひとつだ。彼は渡邉から説明を受けた時の印象について「正直なところ、電話やメールとどう違うのだろうと思いました」と振り返る。ところが、実際に使ってみて警備や設備を担当する協力会社のスタッフから連絡が来るようになると、すぐにOneRepoの利便性を認識した。「あがってきた情報をオーナー様や本店に報告するか、報告する場合は送信先をどうするか。内部で処理する場合も含めて、自由自在に対応できるのでとても便利ですし、協力会社とのコミュニケーションツールとしても役立ちます」。
導入後しばらく、渡邉は週1回竹芝に赴いてヒアリングをしていた。杉江の側でも協力会社のスタッフを交えて週1回ミーティングを行い、伝えるべき情報を集約した。「感触を教えていただくことで、運用面や操作性などさまざまな改善点を洗い出すことができました」と渡邉は感謝を口にする。
一方、清水が担当する管理物件にはスマートフォンやアプリに慣れていないスタッフが多いところもあり、有用性がなかなか伝わらないと感じることもあったが、現地に何度も足を運んで実際に使ってもらうことで、徐々に反応が変わってきた。「ビルテックのスタッフが常駐しない小さな事業所でも活用できる点などは高評価をいただいています」と清水は手ごたえを語る。

新たなニーズを創造することが大切

試行の反応は概ね良く、特に第一報としての即時性と写真が付けられる点が好評だという。当初、写真は1度の送信で1点しか添付できなかったが、現場の要望によって3点まで添付できるようになった。試行の成果が反映されているのだ。
こうして蓄積されたノウハウは、外部への展開にも生かすことができるだろう。「今まではニーズに応えていれば良かったのですが、これからは新しいニーズを作っていかなければならない時代です。お客さまが気づいていないことをこちらから提案することが大切です」と杉江は強調する。小さなワーキンググループで生み出されたニーズが社内で浸透し、オーナーや協力会社にも波及しつつある。やがて、このニーズがビル管理業界全体に広がり、装備しているのが当然のありふれたアプリケーションになるかもしれない。そして、その頃にはまた、ビルテックの社員たちから新たなニーズが創造されるだろう。

渡邉 佑亮
ビル事業本部 企画部
企画グループ
清水 琢磨
ビル事業本部
品川開発部
杉江 貴裕
ビル事業本部 企画部
教育グループ
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