人々の生活を支える、駅づくり
街のシンボルともいえる「駅」。普段何気なく利用し、コミュニティの一部として人々の生活に溶け込んでいる。様々な「交通」や「街」そして「人」をつなぐことで賑わいを生む駅をお客さまが快適・安全に利用することができる場所とし、それを守り続けることが、当社の使命である。
今回は、長野支店工事課が担当した篠ノ井線 明科駅新築工事(長野県安曇野市)を振り返りながら、請負工事の魅力を伝えたい。
施工会社として選ばれ続ける提案力
当社業務の柱のひとつが「請負工事」である。もう一つの柱である「維持管理」における老朽化設備取替工事や故障設備の修繕工事とは異なり、新設工事では、基礎や壁内部の構造など建物の詳細を一から理解することができる。教科書では学べないリアルな知識が深まることは最適な維持管理の実施にもつながるのである。
工事担当者は、発注者と協力会社の間を取りまとめることから、双方への「提案」がポイントとなる。コストダウンや工期の調整にとどまらず、材料や施工方法等、着手前からそれぞれの目線に立ち、数多くの要望を踏まえながら、納得のいく結果を出すための提案力が必要である。
また、施工の技術や経験だけでなく、建物の維持管理の経験による「利用者の目線」に立った工夫やアイデアが提案できることも当社の強みである。
駅づくりに対する「こだわり」
今回の工事には、いくつかのこだわりがある。まず発注者である、JR東日本(以下:JR) 長野建築設備技術センターのこだわりは『木材』。80%以上が長野県産で、内部はスギ材、外部はアカマツ材を使用している。
設計者のこだわりを活し、内装にはコンクリート板のような素材(けい酸カルシウム板)にチョコレート色のドット柄が入っているモイス材(不燃ボード)を使用した。間近で見なくては気付くことができないほどだが細部までこだわる強い意志が感じられる。
外壁や屋根にも既製の材料を使うのではなく、鉄板と曲げ機械を持ち込み、現場で設計図通りに折り曲げ加工をした。特にリブの作成では、鉄板が厚く加工には非常に苦労をしたが、なんとか難しい納まりを実現した。また、駅舎横の窓枠は、下部に大きな箱状のふくらみがあるデザインで、こちらも現場で鉄板を折り曲げて一つ一つ製作し設計者のこだわりを実現した。
工期は建築のみで約半年間。秋から春にかけて実施した。雪が降る冬を迎える前に、外装工事を終わらせる必要があったため、棟上げと屋根葺きがひとつの山場であった。
当社の工事担当者 今村副課長のこだわりは、三つ。駅舎を外から見たときに感じられる「山」のフォルム。安曇野のアルプス山脈を一望できる待合所の「大きな窓」。その窓から美しいアルプス山脈を眺めるにぴったりな「可動式ベンチ」である。地元の魅力を伝えたいとの想いで、難しい施工に豊富な経験とアイデアで取り組んだ。
多くの人が携わるからこそ、「こだわり」は様々。発注・設計・施工、それぞれの「こだわり」を「より良い場所を作る」という考えを軸として、ひとつの建物に収めることも、工事担当者の重要な役割である。
社内だけに留まらないチームワーク
本工事で当社が請け負ったのはJR明科駅の建築工事のみ。設備、電気工事はそれぞれに別会社への発注となった。この他、安曇野市が計画した駅前開発工事も道路、広場工事を4工区に分けて駅舎と同工程で進行することとなった。関係者が多い中、今村副課長が中心となり、道路、駅前広場を含めた全体調整会議のほか、駅舎単独の工程会議も毎月実施した。関係者一同が参加する会議では開催ごとにコミュニケーションが深まり、意見が大きく食い違うことはなく、スムーズに進行できた。