「人の感性のみに頼らない調査」で駅の安全・安心を守る
検査センターの使命
当社維持管理業務の基本は「予防保全」。ビルテックでは、日頃より検査担当社員がこれまでに養った経験とノウハウにより、定期的な建物検査を行っている。
ただ、豊富な知見に裏付けられた検査手法である一方、人の感性には限界がある。そこで重視しているのが「障害予防調査」だ。
この役割を担うのが、検査センター。
首都圏エリアを対象に障害予防調査を行っている。
障害予防調査
障害予防調査は、10年に1回実施している。鉄道施設に近接した部分や高所など、普段直接見る事のできない部位の触診や部分解体による内部確認、特殊検査機器を使用した「人の感性のみに頼らない調査」である。
障害予防調査は、駅を利用されるお客さまに、より安全な建物・設備を提供するため、仕上げ材落下等の重大事故の防止対策として2010年度より開始。
経験やノウハウによる感性が基本の検査では把握が困難な高所や隠蔽部の劣化状況について、仮設足場や部分解体等の手段を用いて触診、打診、下地確認等を行い、重大事故を未然に防ぐのが目的だ。
検査センターではウェアラブルカメラやファイバースコープ、赤外線カメラ等、特殊検査機器も積極的に活用。
お客さまにけがをさせる恐れのある箇所、列車運行に支障を来す恐れのある箇所、雨漏れの恐れのある箇所を重点的に調査している。
障害予防調査のポイント
障害予防調査は、まず図面の読み込みや過去の修繕・雨漏れ履歴等の現状把握から始める。想定される弱点箇所を洗い出し、劣化要因と被害の予測を行う。
その後、実際に現場に出向き昼間の時間帯で下調査を実施。その結果をもとに調査方針を検討し調査メニューの策定を行う。下調査時に不具合箇所を予測し、調査のために必要となる高所作業用の足場や特殊検査機器を適切に選定することも重要だ。
調査は、終電から初電までの3,4時間といった夜間の短い時間で行う事が多いため、限られた時間で確実に調査すべきポイントを押さえる必要がある。
特に、お客さまにけがをさせる恐れのある箇所、列車運行に支障を来す恐れのある箇所は重要な調査ポイントである。
中でも金属部分は重要な検査箇所だ。駅は、柱や梁、外壁、庇など多くの部材に鉄などの金属が使われている。金属を劣化させる主な要因は雨水である。雨水によってどのような金属劣化や被害が予想されるのだろうか。屋根の劣化箇所や、部材と部材の隙間などから雨水が天井内に浸入する。天井内に浸入した雨水は、梁や天井を伝わり予想もつかないところから水滴として落ちてくる。落下箇所が駅コンコースであればお客さまが滑って転ぶ恐れがあり、電気室などの駅設備室であれば列車運行に支障する恐れもある。天井内に浸入した雨水は、金属製の固定金具や下地材を劣化させ、外壁や庇が落下する恐れもある。このようなトラブルや危険を事前に把握することが私たちの最大の使命であり、特に雨水による金属劣化を重要視している理由である。
熱きメンバー
検査センターのメンバーは総勢12名※。メンバーは若手社員が多く、若手社員を中心に生き生きと業務を進めている。もちろん、ベテラン社員によるサポート体制も充実。夜間の短時間で検査は行われ、様々な手法から最も効率的で最適な検査方法を組み立てる必要があるため、チームワークがものをいう。そこは、チームビルテック。メンバーみんなの楽しくかつ真剣な議論の中から、最高の成果が期待できる職場である。
検査センターには熱き社員のエピソードがある。それは、土砂降りの雨が降りしきる夜。彼は、高所作業車のバケットに乗り、地上10m以上の高さで1時間以上も調査を続けた。外壁の最上部から浸入してくる雨水のルートを確認するために。その結果、雨水の浸入箇所を特定し、雨水が引き起こす金属劣化による部材の落下を防ぐことができた。
駅を利用されるお客さまに快適にご利用頂くため彼は徹底的な調査を行った。当社の社員は、より良い空間を提供するために愚直に業務を遂行し、お客さまの信頼に応えたいといつでも考えている。そんな姿を象徴するようなエピソードである。
※2023年4月現在
技術の継承
経験豊かな社員は、慣れない社員にいつでも技術を継承しなければならない。OJTが検査センターの社員教育の中心。若手からベテランまで垣根無く、いつも楽しく検査業務を語り語られるようなコミュニケーションあふれる職場だ。
当社では、全12支店を対象に、維持管理業務の根幹をなす検査業務のスキル向上を目的として「障害予防調査業務体験研修」を実施している。研修では、普段の維持管理業務で必要な検査業務の基礎技術から、検査センターで行われている障害予防調査を実施する上で検査のポイントや特殊検査機器による手法を教育し社員の技術力向上を図っている。
これから
検査センターの技術は、ビルテックの技術の裏付けであり、誇り――安全に、安心して駅をご利用いただけるよう、これからも全力で予防保全に取り組んでいく。